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May 26, 2011

財団法人日本漢字能力検定協会について

 5月20日金曜日の文部科学委員会で自民党の馳浩理事が財団法人漢字能力検定協会について質問されました。
 私が昨年4月から今年の3月5日解任されるまで理事長をしていた財団法人です。
傍聴していたマスコミの人が自公連立ですかとメールしてきたので、すぐに関係ありませんと書いて送りました。
 政治家は、特に小選挙区になってから一国一城の主なので、党としての仲間意識、連帯があったとしても基本的には自立、独立している存在です。まして質問内容はお互いにタッチしない、出来ない関係です。
 馳議員は公益法人の正しいあり方として、様々な疑念を抱いている事項の事実を把握したいと考えられたのでしょう。

 一昨年初頭、マスコミによって漢検は一躍有名になりました。漢検を創立し、年間240万の受験者に検定試験を提供するまでに発展させた、大久保昇、浩、理事長、副理事長が背任横領をしていると書きたてたのです。マスコミが騒ぐと周囲も関心を持つ。事実はどうなのかと興味津々になる。

 漢検は京都が本部ですから私も当然、大久保元理事長と面識がありました。
 私の事務所に数回相談に来られました。最初、漢検を立ち上げたとき、もちろん誰も漢字に試験?そんな発想ないでしょう、と一掃され、それでも高い理念を掲げ、強い信念を持ち、私財を投げ打って創立し、何年も赤字が続いたとの発言に、私は「マスコミ報道と今の内容は余りにも乖離しているから、弁護士同席のもとで真実を述べられる記者会見をすすめます」と提言したことがありました。

 納得して帰られましたが、それがなされないまま、マスコミの報道は加熱し、再度、私のもとに相談に来られたとき、「もう台風が過ぎるのをじっと耐えて待つ状態ではないようです。私は正直言って内容を正確に把握していません。でも今の状況を判断するに、いずれの時か冷静な客観的な検証のもと、創業者の信念をみんなが認める為にも、一時期、身を引かれるのが賢明なように思います」と申し上げたら、「それならば池坊さん、理事長になって下さい」と言われたので、「私は無理です。夏には選挙を控えています。でもこの事業は、漢字を認識、普及するために極めて重要だと思います。私はこの事業の推進には力を尽くしていきたいと思います」とお答えしました。
 そして、私の知人である弁護士の元再生機構理事長、元日本弁護士会会長の鬼追さんを理事長に推薦しました。

 良い方を推薦していただいたと、当時、文部科学省にも感謝されていたのに、やはりこの財団は、そこに働くほんのわずかの人たちが邪(よこしま)なのか、伏魔殿に棲む魔物がいて、鬼追さんは3月で退任され、その後を私が引き継ぎました。
 公平、公正な運営を、たとえ留保金が多額にあろうとも、身を削って受検した人もいるだろう事を考え、堅実に無駄のない職場管理を願ってきました。

 たとえ国立大学と言えども寄付する時には、その成果を公表し、受験者の納得を得る事も必要だと主張してきました。でもそれは、一部の人には不満だったのでしょう。あっという間に足をすくわれたのです。
 振り返ると、一昨年、マスコミに煽られ、京都地検も漢検の元理事長、副理事長を起訴し、漢検も控訴しました。その裁判は2年も続き、漢検自身も民事裁判で6件提訴したのです。

 発端は、解雇された一職員が強い私怨の中で、不正にあたるらしい(裁判中ですから明言は避けますが…)資料を集め、マスコミ、裁判所に持っていったとも聞いています。真実はまだ解明されていません。でも確かに、私が理事長になって数ヶ月して、大阪からマスコミ各社に発信された、私に対する複数の嫌がらせ、誹謗、中傷の記事。どこかの週刊誌が飛びつく事を願っていたのでしょう。
 そして同じ日に開催された理事会でも、その中傷記事が取り上げられ、問題になりました。私にとっては晴天の霹靂、私は、どこかでじっと闇を伺っている暗い存在を感じ、心が冷えました。

 しかしながら、内部にいる人間しか分からないことが書かれていることに疑問を持ち、心が沈む思いにかられながらも、私はだれが発信したか分からない、誹謗、中傷に左右されてはいけない、毅然と運営管理していかなければならないと身を引き締めました。

 でも、そんな私の立場に、暗い闇の存在は苛立ったのでしょう。今度は右翼からの公開状が届きました。
 そんなものは無視しようと私は思いましたが、理事の中には敏感に反応する方もいて、公開状に対し、弁護士に相談して答弁書を書きましたが、すぐに、この答弁書では不満足だと、街宣車が何日か、本部の前に来て、私の中傷をがなり立てました。
 その中にあって、超然と平常心で職務に精励していた若い職員には、敬服するとともに、言われなき事であっても私の誹謗なのにと、感謝の思いを深くし、愛おしさが湧いてきました。この若い職員を大切に育てていかなければならないと心の引きしまる思いでした。

 でも街宣車にも屈しない私に、更に苛立ったのでしょう。暗い闇の存在者(誰だか私にはわかりませんが…)は、今度は職員有志と書いた匿名の私への中傷、誹謗の手紙を評議員、理事に送りつけたのです。誰が一体街宣車を依頼したのか。依頼した誰かがいるのです。
 しかしながら、その解明もないまま、中傷されるような私はけしからんという風潮がいつの間にか一部の理事者の流れを構築していったのです。本来、問題にすべきは匿名の記事が来た事ではなく、そのような職場の中に存在する風土、文化のはずでした。
 しかし、それらを検証する時間もなく、あっという間に、匿名記事がくるような理事長は理事長にふさわしくないという事で罷免されたのです。

 3月5日、私を罷免した後、すぐに手際よく、高坂専務理事が理事長になり、3人の非常勤理事は常勤理事に昇格したと発表されました。
 あっという手際のよさ、誰の手配か、余りの手際の良さに、そのような問題処理にはすこぶる長けている人がいたのだろうと、怒りよりも感心してしまいました。
 伏魔殿と義憤を感じつつ、私は、漢字を賢明に勉強している受検生のために、何もしゃべるまいと思っていましたが、馳さんの質問を聞いていて沸々とこの2ヶ月余の悶々とした思いが吹き上げてきました。

 馳さんの質問を記します。読んでほしいと思います。私も数ヶ月前を思い出し、思わず書いてしまいました。

 馳理事の質問(発言要旨)は次の通り。

 きょうは、財団法人日本漢字能力検定協会の内紛問題について追及したいと思います。今、多くの小中高校で、学校を挙げて、クラスを挙げて漢検の試験を受けて漢字に親しもうと盛り上がっている中で、その運営主体の漢検で内紛が続いているということで、所管である文部科学省としてどこまで対応できているのか、質問いたします。
 現在、日本漢字能力検定協会では、刑事事件は何件抱えていると報告されているでしょうか。この刑事事件の顧問弁護士に高額な着手金を払っていると、評議員会でも問題になったと聞いています。この件を把握していますか。
 二件の刑事事件に、成功報酬を含まない着手金を五千万円以上払ったんだそうですね。これは、違法ではないとしても、非常識だと思いませんか。これも道義的な背信行為と考えておりますが、文部科学省としての見解を求めたいと思いますし、その支払いをした当時の実務をしていた元理事長の鬼追さん、元常務理事の高坂さん、この方が現在の理事長ですが、こういう役職を持った方々の責任問題は問われないのでしょうか。

 非常識ではないという判断をされておられるのは、私の感覚とはちょっと違うなと。
 つまり、成功報酬を含まない着手金という形で、いきなり四千五百万円ですか、ぽんと払える、恐らく払える金額を持っているから払ったのだと思いますが、成功報酬としてならば私もそんなものかなという気もしますが、着手金という形ですから、私は、今の答弁には、正直ちょっと承服できない。ということは、当時支払いをした鬼追理事長、当時の常務理事であった高坂さんに責任は全くないと考えているということでよろしいですね。

 この四年間で理事長は何人代わっていますか。現在の理事長の高坂節三さんはいつ就任されましたか。
 報道では、前理事長の池坊保子さんが臨時理事会のクーデターで追い落とされたと、尋常ならざる表現で報道されています。理事会の招集権限はどうなっていますか。

 池坊前理事長は、都合により本人の参加が難しい上に、開催を中止すると全理事に内容証明つき郵便で送ったと証言しておられます。それを無視して臨時理事会が三月五日に開催されました。これは事実ですか。

 理事会が中止になったと思い込んで欠席をした理事もいる、つまり理事長からやめますよという報告が来たわけですから、内容証明つき郵便が。そういう中で開催された理事会が、これは正当な招集に基づいた理事会と言えるのでしょうか。

 理事長は理事の互選で決められることになっています。緊急理事会では、理事の九人中、三分の二であるぎりぎりの六票の賛成で議決されたと聞いています。
 しかし、先ほど申し上げたように、池坊前理事長が欠席で、中止になったと思い込んで欠席した理事もおり、議決前に退席した理事もおられるそうです。ある意味、お手盛りの議決と言えるのではないでしょうか。これが本当に民主的な運営と言えますか。

 賛成に回った非常勤理事のうち三名は、この採決の直前に、経済的報酬、つまり、高坂理事長が誕生すれば常勤理事に昇格させ、在宅勤務を含めて週三日勤務すれば、八百万円前後の報酬を約束された上での表決と伺っております。
 公益事業を営む法人の理事会の議決の仕方として、経済的報酬による、いわば買収的な表決は、社会的に見て健全な判断とは言えません。そこで確認します。非常勤理事三名は、その後、いつ常勤理事に昇格し、現在の報酬は幾らですか。

 一面的な見方をすれば、買収じゃないかと指摘もできるんですね。それも、理事長が決まった三月五日に非常勤から常勤に格上げして。ちなみに、非常勤の報酬は幾らですか。

 会議ごとに七万円が、一挙に年八百万円を約束されて、余りこういうえげつないやり方はしませんよね。高坂理事長が誕生したその日に、非常勤から常勤に格上げしているんですよ。
 そこで、妥当な手続を経ていない理事会において、買収行為的な議決によって役員が選定された。文部科学省として、これを妥当と認定しますか。無効にすべきではありませんか。

 今回の池坊前理事長の退任理由が、三月五日の高坂新理事長の記者会見によると、国会議員として多忙であるが故に、漢検の京都本部で指揮命令をとりにくいという理由でした。いわゆる二足のわらじ批判です。
 では、池坊理事長は、解任されるまで理事会を欠席したことはありますか。

 新しく理事長におさまった高坂節三さんは、選任された三月五日時点で東京都の教育委員でした。間違いありませんね。

 高坂新理事長は、いつからいつまで東京都の教育委員を務めていましたか。

高坂新理事長は、いつからいつまで前原誠司東京後援会の代表でしたか。

 地方教育行政法第十一条の五において、教育委員の服務について何と書かれていますか。

 第十五条には「委員は、政党その他の政治的団体の役員となり、又は積極的に政治運動をしてはならない」と定めています。東京都に限らず、全国どこの自治体でも適用される法律です。
 この条文を素直に読む限り、高坂節三東京都教育委員が政治家前原誠司さんの東京後援会長をしていたことは、服務違反となります。間違いありませんね。

 服務違反に罰則はありますか。

 服務違反である。しかし、法的には罰則はない。私も、総務省からこの政治団体の収支報告書を取りそろえて、すべてチェックしました。多々問題がありますが、ここはそういうことを追及する場ではありませんので、違う場所でやらせていただきます。
 そこで、高坂さんは、前原さんの政治団体の代表であり、都の教育委員という立場が四年間ほど続いていたんですね。やはり私は道義的な責任は免れないと思っています。そして、公益法人である漢検の理事長になられました。それがふさわしいのかどうか、これからも追及させていただきます。
 問題は、指導すべき文部科学省の姿勢です。
 三月五日の臨時理事会の前に、所管官庁である文部科学省の生涯学習政策局長が、穏便に話し合いによって速やかにいさかいをおさめるように行政指導していたと伺っております。その事実を確認します。どういういさかいがあったと確認し、行政指導の結果、どうなったと確認していますか。

 所管省庁として、板東生涯学習政策局長は、誠意を持ってお二人に説明し、運営について是正を求めていたわけですよね。
 にもかかわらず、余り穏当とは言えないような三月五日の緊急理事会という形で、先ほど申し上げたような形で新しい理事長が決まってしまったという経緯なわけですよ。改めて、文科省として公益法人に対する指導のあり方も問われる問題です。
 現在の高坂節三理事長と前理事長の池坊保子さんを委員会に参考人としてお呼びすることを求めたいと思います。

 日本漢字能力検定協会には、一体幾らの内部留保金がありますか。

 いわゆる、ずっと前の大久保理事長親子のころに大問題になりました。文科省も調査に入り、実地検査、行政指導をされてこられました。それ以降、平成二十一年度以降これまでに、漢字能力検定試験の受検料は幾ら引き下げられましたか。

 私は、先ほど内部留保金という言い方をしましたが、いわゆるフローのキャッシュばかりではなく、資産も抱えているはずです。それらを含め、平成二十二年度でどの程度の規模の資産を抱えておりますか。

 目ん玉が飛び出るとはこういうことであり、差し引き七十億円の資産をめぐっての理事の内紛と、ワイドショー的に言えば言えるんですよね。つまり、もっと検定料を引き下げることができる余地があるのではないかということなんですよ。いかがお考えですか。

 醜い内部の争いは、どこの公益法人にもあるのかなという印象を持ちながらも、いろいろと調べさせていただいた。役員の資質とかも、それは言おうと思えばいろいろあります。
 ただ、今後、平成二十五年度の公益法人改革に向けて、文科省が所管する公益法人もたくさんあります。今の事実を聞きながら、文部科学大臣として今後、公益法人に対する指導監督のあり方、そして今現在の漢字能力検定協会が本当に公益法人としてふさわしいのかな、その感想も含めてコメントをいただいて、私の質問を終わります。

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